入試は団体戦

帰国入試枠に備えて

入試といえば、イメージ するのは個人戦です。それぞれが志望校を決め、試験場で頼れるのは我一人、まさに個人戦そのものです。
しかし、そこに至るまでの道は団体戦だと考えるのが効果的です。

 海外の受験生の大きな弱 点は受験に対して現実感がないことです。受験に向けて勉強を始めたとしても、一人だけでずっと努力していくのは困難で、半年もするとマン ネリ化し、モティベーションの低下が深刻になる場合が少なくありません。そんなときに周りにお互いに刺激しあう仲間がいれば、どんなに心強いでしょう。

 過去に筑駒、開成、早慶などの難関校に合格した生徒には必ずクラスの中にそれぞれ競い合う仲間がいました。授業の中で「この問題は今までSAPIAで数人しか解けた人がいない」という難問にぶつかったときに、「自分もこの問題 を解けた一人になりたい」「友達よりも早く正答を出したい」という一人一人の気持ちがひしひしと伝わってきます。

 また特に中1、中2の頃は、面倒くさい問題に出くわしたときに、「もういいや」と投げ出したくなってしまう生徒もたくさんいます。しかし問題を解くのに疲れてしまったときにまわりを見渡して、皆が真剣に問題に立ち向かっている姿をみて、「自分だけここで引き下がるわけにはいかない」と再び問題に立ち向かう力を与えられるのです。

 特に中3の後期になると、毎週のように制限時間内にはまず解けないという難問に出くわします。しかしこの頃になるとSAPIA でがんばってきた受験生は「自分に解けない問題はないはずだ」という自信に裏付けされた学力も身についてきます。

 今年も中3のクラスで授業中にだれも解けなかった問題の解き方を教えようとすると、「待った!」の声がかかるようになりました。「来週までに絶対に解いてきますから、それまで答え合わせを待ってください」というのです。

 そして昨日も、中2の数学クラスが終わったと同時に、中3の生徒が2人なだれ込んできました。そして晴れ晴れとした顔で、「先生、先週の問題の答はこれで合ってますか」と言ってノートを開いて見せてくれましたが、 そこには見事に正答が光っていました。このようにして力をつけた生徒こそが入試で力を発揮できることは言うまでもありません。

 さらに、このように厳しい状況で競い合った友達は単なる受験時のライバルにと どまりません。彼らにはいっしょに受験を戦った仲 間としての非常に強いきずな出来上がり、帰国後もずっと悩みを打ち明けられる一生の友となります。

 20年前に帰国した生徒達(もう30代半ばです)の集まりが東京で開かれたなどという知らせを聞くことも珍しいことではなく、毎年のように報告がきます。「シカゴでいっしょにがんばった仲間だからこそ、お互いに理解し合える」彼らはそう言います。

(SAPIA ニュースレター2014年11月号より)